この図で見るロジスティック写像
ロジスティック写像は、パラメーター を持ち、区間 をそれ自身へ写す です。 から始めて を繰り返すと数列が得られます。このページでは、その長期挙動が とともにどう変わるかを見ます。
図が示すもの
大きな画像は分岐図で、横が 、縦が です。各列は中央の を取り、 から始め、最初の 回を除いて次の 回の位置を記録します。明るいほど頻繁に訪れます。 と は右上に表示され、拡大すると増えます。各列は1つの初期値の長期標本であり、軌道の全履歴ではありません。「典型的」とは長さの意味でほとんどすべての初期値を指します。 を代表として使いますが、すべての で典型的だと証明しているわけではありません。
図の下のλ の帯は同じ 軸を使い、リアプノフ指数 の数値推定を示します(同じ典型的初期値で1000回を除き、4000回を平均)。2つの初期値の無限小の差が広がる平均の指数率で、0未満なら差は平均的に縮み、0より大きければ広がります。超安定パラメーター( が吸引周期軌道上にある)では です。数値的に求めたパラメーターの位置に、周期を添えた下向き矢印で表示します。
パネル上部のクモの巣図は、曲線 (または 、、)と対角線 を示します。 から縦に曲線へ、横に対角線へ進んで1段です。塗りつぶし点は吸引不動点、白抜き点は反発不動点です。
キーで開く時系列は に対する を示し、右には軌道の 回分が40区間のそれぞれに入る割合を示します。 では濃い線が理論上の確率です。
この形になる理由
不動点 の傾きは です。 なら で、近くの点を引き付けます。 が3を越えると は を下回り、吸引力を失います。その隣に2周期軌道 が現れ、乗数は です。この対は と対角線の新たな交点です。クモの巣図を に切り替えると見られます。 で2周期軌道の乗数は に達し、今度はこの軌道が分かれます。
周期が倍になる間隔は次第に短くなり、 に集積します。隣接間隔の比はファイゲンバウム定数 に近づきます。この写像だけでなく、2次の極大を持つ1つ山の写像のクラス全体で同じです(1978年にファイゲンバウムが発見し、後にランフォードが計算機を援用して証明)。
カオスの中の窓: が を越えると が対角線に接し、吸引的なものと反発的なものの2つの3周期軌道が生まれます(乗数 のサドルノード分岐)。窓の中では、独自の周期倍分岐が続きます。
では です。 と置くと、2倍写像 が に対応します(半共役: と が同じ になります)。ここから典型的な初期値の長期密度 と が厳密に得られます。
カオスに見える領域の至るところに周期の窓があります。吸引周期軌道があれば、典型的な初期値はそこへ近づきます。それ以外の場合、描いた列は指定した初期値の長期標本であり、あらゆる初期値を分類したものではありません。
読み違えやすいところ
- 分岐図の1列は1つの軌道の履歴ではなく、過渡部分を除いた長期標本です。分岐点付近など、過渡過程が遅い場所では列がぼやけます。
- 「長期挙動」の周期は数値的な判定です。連続する3つの区間で反復が見られ、反復回数を増やしても結果が同じで、乗数の絶対値が1未満であることを調べます。浮動小数点上の反復は吸引周期軌道の証明ではありません。判定できない場合はその旨を表示します。
- λ の符号で何でも分類できるわけではありません。、 では軌道は動きませんが、その軌道に沿う λ も です。
- 特別な初期値には固有の行き先があります。 では となり、0にとどまります。このような初期値全体の長さは0なので、典型的な初期値についての主張は変わりません。
歴史
「ロジスティック」は、フェルフルストが1838年に示した人口成長の微分方程式に由来します。メイは1976年の Nature 論文でこの離散写像を用い、単純なモデルでも非常に複雑に振る舞うことを示しました [1]。ウラムとフォン・ノイマンはすでに1947年に の不変密度を指摘していました [2]。1978年にはファイゲンバウムが周期倍分岐の普遍定数を発見し [3]、シンガーが吸引周期軌道が高々1つとなる条件を示しました [4]。
関連する概念
参考文献
- R. M. May, “Simple mathematical models with very complicated dynamics”, Nature 261 (1976) 459–467. doi:10.1038/261459a0
- S. M. Ulam, J. von Neumann, “On combination of stochastic and deterministic processes” (abstract), Bulletin of the American Mathematical Society 53 (1947) 1120.
- M. J. Feigenbaum, “Quantitative universality for a class of nonlinear transformations”, Journal of Statistical Physics 19 (1978) 25–52. doi:10.1007/BF01020332
- D. Singer, “Stable orbits and bifurcation of maps of the interval”, SIAM Journal on Applied Mathematics 35 (1978) 260–267.
- O. E. Lanford III, “A computer-assisted proof of the Feigenbaum conjectures”, Bulletin of the American Mathematical Society (N.S.) 6 (1982) 427–434.
- M. V. Jakobson, “Absolutely continuous invariant measures for one-parameter families of one-dimensional maps”, Communications in Mathematical Physics 81 (1981) 39–88.
- J. Graczyk, G. Świątek, “Generic hyperbolicity in the logistic family”, Annals of Mathematics 146 (1997) 1–52.
- M. Lyubich, “Dynamics of quadratic polynomials, I–II”, Acta Mathematica 178 (1997) 185–297.
さらに読む: ウィキペディア: Logistic map (英語); MacTutor数学史アーカイブ: Robert May (英語); MacTutor数学史アーカイブ: Mitchell Feigenbaum (英語).